

去る7月22日、中国駐大阪観光代表処主催による文化交流イベント「茶のハーモニー・雅集」が、2025年大阪万博の中国パビリオンにて開催されました。
世界30を超える国・地域のパビリオンや万博関係者から約80名の来賓が集い、館内はまさに『国際色豊かな茶会』の趣。各国の政府代表やパビリオン館長たちが、静謐な茶の香りに包まれながら、中国茶文化と東方美学の世界へと誘われました。
冒頭の挨拶で、中国パビリオン館長・章書靖(しょう・しょせい)氏は「茶は中国文化の結晶であり、東方の知恵と審美が凝縮された存在」と語り、中国パビリオンがこれまでに90万人以上の来館者に茶文化を紹介してきた実績にも触れました。「和して同ぜず」の精神を世界に伝える、まさに茶は“静かなる外交官”と言えるでしょう。
続いて、中国駐大阪副総領事・方煒(ほう・い)氏も登壇。「茶は飲み物にとどまらず、文化を運ぶ象徴的存在」と述べ、かつてシルクロードや茶馬古道を通じて世界へ広がった中国茶の魅力と、そこに息づく儒・道・禅の思想に触れました。
さらに、中国駐大阪観光代表処の首席代表・馬暁琛(ま・ぎょうちん)氏からは、中国茶文化の長い歴史や茶葉の種類、そして中国の銘茶産地を巡る多彩な「茶旅」資源について紹介があり、参加者の関心を集めていました。
会場では、古琴の優美な音色が静かに響く中、茶芸師による伝統的な茶の所作が披露され、その姿はまるで時を超えた美の瞬間。琴と茶が一体となった空間には、心を解きほぐすような静けさが漂っていました。
来賓には、武夷岩茶、景邁山プーアル茶、鳳凰単叢の3種のホットティーと、南平白茶、英徳紅茶の冷茶という計5種の名茶が振る舞われ、それぞれが異なる香りと味わいで、来場者を深い品茶の世界へと誘いました。繊細な中華菓子も添えられ、五感を満たすひとときとなりました。
また、中国の無形文化遺産「漆扇」制作体験では、参加者が自ら扇に模様を施す伝統技法に挑戦。水面に広がる漆の模様を写し取るこの技法に、来賓たちは思い思いの作品を仕上げ、手づくりの扇子を手に心に残る体験を持ち帰りました。
最後には抽選会も行われ、「ニーハオ・チャイナ」ロゴ入り茶器セットやパンダのぬいぐるみ、「茶のハーモニー」限定の茶葉などが来場者に贈られ、会場には笑顔とあたたかな拍手が穏やかに広がっていきました。
華やかさに彩られながらも、どこか落ち着いた余韻を残した今回の「茶のハーモニー・雅集」。
その舞台が、世界が未来への対話を交わす大阪万博であったことに、静かな意味が宿っているように感じられます。
言葉や立場を越えて、ひとつの茶席を囲むことで生まれる心のつながり。多様な背景を持つ人々が、同じ香りと味わいにふと頬をゆるめ、そっと感想を交わす——そんな一場面の積み重ねこそが、文化の真の交流なのかもしれません。
「お茶」という飾らぬ存在が、人と人をゆるやかにつなぐ。
静かに心に残る、そんなひとときでした。