
牛肉と沙茶の沼へ——嶺南のごちそう麺
2026-07-14


坂道を上るたびに、赤い屋根の向こうから海が顔を覗かせます。
木々の間に見える洋館。
潮風に揺れる街路樹。
そして、遥か先まで続く青い海。
どこか異国の港町を思わせる風景と、中国らしい街の活気が自然に溶け合っています。
それが、青島という町です。
青島の人々が誇るのは、何よりも「鮮」。
海に囲まれたこの町では、新鮮な海の幸が日々の食卓を彩っています。
蒸気を上げる大鍋には、ホタテ、アサリ、カキ、エビ、サザエが山のように盛られ、蓋を開けた瞬間、海そのものの香りが立ちのぼります。
素材そのものの旨みを味わう。
それが青島流です。
青島でぜひ味わいたいのが海鮮水餃子。
サワラ、イカ、ウニ、エビ、黄花魚など、海の幸を餡にした餃子は、この町ならではの名物です。
ひと口かじると、熱々の旨みが口いっぱいに広がります。
日本ではなかなか出会えない味わいです。
さらに海腸(ユムシ)の旨みをたっぷり吸った「海腸撈飯」や、渤海のエビと膠東白菜を使った「大蝦炒白菜」など、素朴ながら忘れがたい郷土料理も数多く残されています。
そして青島の食卓に欠かせないのが、やはり青島ビールです。
1903年に誕生した青島ビールは、百年以上受け継がれてきた酵母と醸造技術を持つ、中国を代表するビールブランド。崂山の良質な水を用いて醸されるその味わいは、世界中で親しまれています。
きめ細かな泡。
豊かな麦の香り。
やわらかな苦みと爽やかな後味。
しっかり冷やした一杯は、海鮮の旨みを引き立てながら、口の中をさっぱりと整えてくれます。
青島では、ビールは単なる飲み物ではありません。
街角のビールスタンドで量り売りの生ビールを買い、そのまま海鮮料理店へ持ち込む。
そんな気取らない楽しみ方が、今も人々の日常に息づいています。
なかでも有名なのが「袋ビール」。
透明なビニール袋に注がれた生ビールを手に街を歩く光景は、青島ならではの風物詩です。海風に吹かれながら、焼きイカを頬張り、ひと口ビールを飲む。
そこには、高級レストランでは味わえない、港町らしい自由で肩ひじ張らない時間が流れています。
海鮮を蒸す湯気、賑やかな食堂の話し声、袋ビールを提げて歩く人々。
この街には、海の恵みを分かち合いながら、ゆっくりと食事を楽しむ文化があります。
気の合う仲間とテーブルを囲み、料理を取り分け、グラスを重ねる。
そんな当たり前の時間が、とても豊かに感じられるのです。
青島を旅したあとに心に残るのは、きっと豪快に味わえる海鮮や有名なビールだけではありません。
人々の笑顔と食卓の温もり。
それこそが、この街が長く愛され続ける理由なのかもしれません。