
中国最北——白夜とオーロラの“北極村”
2026-08-01


西安を訪れたら、一度は味わいたい名物料理があります。それが「牛羊肉泡饃」です。
地元の人々は親しみを込めて、単に「泡饃(パオモー)」と呼びます。
熱々の牛肉または羊肉のスープに、細かくちぎった饃(小麦餅)を加えて煮込む、西安を代表する伝統料理。回族の人々によって受け継がれてきたハラール(清真)料理としても知られています。
泡饃の本場は、西安旧城に広がる「回坊」。イスラム教を信仰する回族の人々が暮らす歴史ある街区で、香辛料の香りが漂う路地には老舗の泡饃店が軒を連ねています。
泡饃のおいしさを支えているのは、店ごとに受け継がれるスープです。牛骨や羊骨に香辛料を加え、何時間もかけてじっくり煮込む。そこへ大きな牛肉や羊肉のブロックを加え、箸でほぐれるほど柔らかくなるまでさらに炊き上げます。炊き上がった肉は一度取り出され、厚めに切り分けられてから泡馍の上に載せられます。
骨の旨みを引き出し、肉を煮込み、味を整えるまでには十数時間。泡饃の名店と呼ばれる店には、それぞれ自慢のスープがあります。西安ではよく、「泡饃屋の評判は、この一鍋のスープで決まる」と言われるほどです。長い時間をかけて育まれたその味こそが、一碗の泡饃を支える土台なのです。
しかし、泡馍の魅力は肉やスープだけではありません。
この料理は、客自身が馍をちぎるところから始まります。
店で渡されるのは、手のひらほどの大きさの焼きたての馍。食べる人はそれを指先で少しずつ細かくちぎっていきます。本場では「ひきさく・ちぎる・つねる・和える」という四つの工程があり、その大きさや形によって仕上がりが変わるといわれています。
粒を細かく揃えるほどスープとの一体感が増し、少し大きめに残せば、もちっとした食感を楽しむことができます。
泡饃のおもしろさは、一杯の中にいくつもの楽しみ方があることです。
もっとも伝統的なのが「乾泡(ガンパオ)」。スープを最小限に抑えて仕上げるため、饃が肉の旨みをしっかり吸い込み、もちもちとした食感が際立ちます。食べ終えた後、碗の底にスープはほとんど残りません。
「口湯(コウタン)」は、食べ終わったあとにスープがひと口分ほど残る仕立て。饃の食感とスープの風味をバランスよく味わえるため、多くの人に親しまれています。
「水囲城(スイウェイチョン)」は、その名の通り「城を水が囲む」という意味。中央の饃をたっぷりのスープが取り囲み、見た目にも美しい一杯です。饃とスープ、それぞれの味わいをゆっくり楽しむことができます。
さらに「単走(ダンゾウ)」は、饃とスープを別々に提供する食べ方。自分の好みに合わせて味わうことができる、通好みのスタイルです。
どの食べ方を選ぶか。
どれくらい細かくちぎるか。
その答えは人それぞれです。
客が饃をちぎり、職人がそれを受け取って仕上げる。
泡饃は、料理人だけが作る料理ではありません。食べる人もまた、その一碗を完成させる大切な担い手なのです。
湯気の立つ碗の向こうには、西安の人々が受け継いできた食文化があります。
ゆっくりと馍をちぎり、じっくりと味わう。
そんな時間もまた、泡饃のおいしさの一部なのかもしれません。